ツルタカブログ

ファッション感覚でランしてる

ツルタカ書店2

久々のツルタカ書店。

今回もノンフィクション。

まったくもって他人事で無責任だが、「未解決事件」というものに心のときめきを感じてしまいます。
もちろん事件の当事者や関係者は、いまでも終わりのない絶望と闘っていられるでしょうし、
もし自分が、そういった事件に巻き込まれることがあったら、到底冷静でいられないでしょう。

つるやが「未解決事件」好きになったきっかけがこの本

 

闇に消えた怪人―グリコ・森永事件の真相 (新潮文庫)

闇に消えた怪人―グリコ・森永事件の真相 (新潮文庫)

 

 



一橋文哉のデビュー作で、この後の彼の作品と違って、冷静で重厚で、構成も工夫されています。
(この後の一橋はいわゆる未解決事件や、センセーショナルな事件についてアレコレ書いていますが、
正直品質は下がりっぱなしで、あまり感動はありません)

そもそも、この「グリコ・森永事件」はドラマチックすぎます。
発端のグリコ社長を自宅から強引に拉致するところから、放火、毒入り製品をバラまき、金の取引、
そして犯行声明による挑発など、下手な2時間サスペンスドラマよりよっぽど派手でワイルド。
それでいて、社長監禁中に社長に着せられていた古いコートが、戦時中グリコが運営していた学校で配布されていたもの
だったりと闇の深さを感じさせる要素も大量にある。
(最近の文献では、あくまで「似ている」と書いてあるものが増えてきて、断定はしてないケースが増えてきましたが。)

作者は、おそらくリアルタイムで現場で取材をしていたのでしょう。
豊富な取材量と人脈が浮き上がってきて、非常に説得力があります。
捜査線上に表れて消えていく、「グレー」な人や組織、この事件を抱える闇の深さを垣間見ることが出来ます。
ノンフィクションとしては白眉じゃないでしょうか。

この事件をモチーフにして、犯人像までを緻密にシミュレートしたのが、高村薫の「レディ・ジョーカー」です。

 

レディ・ジョーカー〈上〉 (新潮文庫)

レディ・ジョーカー〈上〉 (新潮文庫)

 

 



グリコや森永ではなく、ビール会社にターゲットを変更しておりますが、古い体質の巨大企業に恨みのある人物が
復讐戦を仕掛ける。犯人グループのメンバー構成なども、「おそらくホンモノもこんな感じなんだろうな」と思わせます。
長い小説ですが、副読本にはぴったりです。

つるやたかゆき