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■M/世界の、憂鬱な先端  吉岡忍

 

M/世界の、憂鬱な先端 (文春文庫)

M/世界の、憂鬱な先端 (文春文庫)

 

 

 

 

幼女4人殺害犯の宮崎勤が犯行に至るまでを丹念に追ったルポと、90年代、全てが変わろうとしている時代背景を合わせて描いた大作です。
20世紀最後の時代を、『憂鬱な先端』と定義して静かに壊れていく人間の心。東西冷戦が終わり、価値観のパラダイムシフトが起こる中で、日本も狂いまくっていた。
つるやは90年代に10代だったので、比較対象となる他年代を知らないのですが、これを読むとバブルに酔うご機嫌な日本と、その反動の不況という二日酔いの日本の落差の凄まじさが理解できます。
そして、その狂騒の外で静かに狂っていく宮崎勤の内面世界。
作者は関係者に徹底的な取材を行い宮崎の半生を暴いていきます。
先天性の手の障害で積み重なった鬱屈した思いが、自身を可愛がってくれていた祖父の死で爆発していく過程は資料として一級品だと思います。
トリガーが何なのか。
このような異常な犯罪者はなぜ生まれたのか。
本書は、非常に丁寧にそれを追っていきますが、答えはわかりません。
わかるはずが無い。そんなに人間は単純なプログラムで動いていないということだけが、つるやのわかったことでした。
逆にいうと、いつ我々のプログラムがバグを起こして、『あちら側』にいってしまうかわからないということです。
あちら側とこちら側の壁というのは、普段無意識な時は相当厚く感じますが、いったん意識をしてしまったらかなり薄いものなんじゃないかと、考えてしまいます。
もちろん、その壁を越えていないので今こうしてノンキにブログなんざ書ける環境にいるのですが。。


分厚い本ですが一読の価値ありです。

つるやたかゆき