ツルタカブログ

ファッション感覚でランしてる

オシャレランニングファクトリー 太平洋スーパーファスト

GPSロガーを使うと走った記録を地図に残せる。

個人的にランニング用のGPSウォッチの楽しみはその点に尽きる。

別にデータを分析することもないし、過去の自分の記録と比較して一喜一憂することも無い。ただ走ったところが地図に残るのが嬉しい。

 

それが最早、ランニングじゃなくても良い。知らないルートを落とす。そこが山なら登山だし(スキルが無いからやったら事故ると思うが)走ることができないなら歩いても、自転車でもなんでも良い。馴染みのある目的地に行くのだって、バリエーションルートを作れば良い。それが楽しい。

考えてみるとランナーというのも窮屈なカテゴライズだ。一人の耐久者として地図上にルートを残せることができりゃそれでいいや。

 

そんなこんなで、あるとき地図を眺めていて、太平洋岸に軌跡を残せたらオモロイなと思った。

苫小牧から室蘭、そして長万部あたりを線で結ぶ。最高にクール。

とりあえずこのルートを分割して落としてやろう。

丁度タイミングよく、JRのお得な切符の存在を知った。2300円ほどで、特定区間乗り放題。これなら格安でスタート地点にも行けるし、ゴール地点からも帰ってくることができる。

 

札幌発の始発に乗って苫小牧まで。

そこから36号線沿いに室蘭を狙う。ルートをひいていて一瞬、室蘭の手前である東室蘭でいいかな?と思った。

東室蘭の方が街として大きいし、帰りのアクセスも良い。差としてもたったの7㎞だ。東室蘭でもルートを残せたと自分の中で満足できるのでは?

しかし、ふと気がついた。

室蘭国道36号線が終わるのだ。今年の春に、札幌からウトナイ湖を経て苫小牧まで走った。つまり、今回の企画が成功すれば36号線の人力踏破が達成される。これはやるしかない。

 

苫小牧駅を7時半に出発。幸い気温は高めで、着ていたウィンドブレーカーとネックウォーマーは500mも走らないうちに脱ぐことができた。

おそらく、気温に加えて海沿いというところで湿度も影響しているのだろう。

なんとも温く、心地よい。

少し行くと左手に太平洋が見えてくる。うーん、贅沢だ。普段海を見慣れていないからわけもなくコーフンしてしまう。いいなぁ、苫小牧市民。あんまりランナーの姿は見なかったけど、みんなこの光景は見飽きているのかな?

 

とはいえ、慣れというものは恐ろしいもので15kmも走ると風景には慣れてしまった。

そして次第に単調な視界に感覚が支配されていく。

殺伐という言葉が似合う、郊外の道の風景。

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シーズン的にも最も色彩が元気のない季節ということもあるのだろうが、目に入る風景に漂う死の雰囲気。

これが、単独行の風景である。

マラニックやサークルの長距離イベントではこんな風景は見ることができない。

そもそもこんなところは走らないであろうし、走ったとしてもこの風景から死を感じ取ることはないであろう。

単独行でやっているからこそ、この感覚になれる。

 

一人の耐久者として、こういう経験を繰り返して所謂「死の感覚」を身体に取り込む。

それが強さに繋がる。

もっともその強さが世間一般の生活のどこで役に立つかは、皆目見当がつかないのだが。

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追い抜いていく車のドライバーが、不思議そうにこちらを見ていく。

街と街が離れている北海道の田舎で、こういうところに「生身」の人間がいることが信じられないようだ。

 車に乗るということより、地面の上を二本足で走るほうが本質的に『人間的』な行為なはずだが、ここを走るということは不自然なのか。

人類の進化は、二本の足で走ることを不自然な行為にしてしまったのか。

 

白老、登別を抜ける。

正直、単調なコースだ。

左手に見える太平洋は、海面が鈍い光に照らされて死臭が漂ってくるようだ。

海が持つ、こういった表情は不健康だが嫌いではない。

リアルだなぁとすら思う。

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室蘭を前にして脚がとまった。

そして気持ちも折れてきた。

ロングをやっていて楽しいのは、この状態になった時の自分の気持ちの立て直しをマネージメントすることだ。

これができれば、自分が一段強くなれたことを認識できる。

今回はコンビニで肉まんを2つ買って、小休止をとる。

強い風が吹き付ける駐車場で、ストレッチをしながら、身体と心のチェックリストを確認する。

疲れはあるものの致命的では無い、致命的では無いなら、まだいける。

1時間後、室蘭駅に到着。

途中、東室蘭駅をゴールにしようと、悪魔の誘惑があったが、室蘭駅をゴールにしてよかった。

失礼な物言いだが、室蘭駅の周りのさみしい感じが、今回のこの冒険にはぴったりの風景だった。

近くの小さな中華屋でワンタン麺を食べて、帰りの電車に飛び乗って帰宅。

右手に広がる太平洋を見ながら、文明の利器の素晴らしさと、それに頼らないで走りきった自分の脚に思いを馳せて、浅い眠りについた。

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つるやたかゆき