ツルタカブログ

ファッション感覚でランしてる

ホンダF1 失敗の本質

年末にNHK-BSで再放送された『BS1スペシャル F1 世界最速への挑戦〜本田宗一郎を継ぐ者たち』がレコーダに録画されていたので、ダラダラと見返している。

 

前半はホンダの第1期や苦労話と第2期の素晴らしい成績の紹介、そして第4期にむけたテストの様子で構成されている。(放送は2015シーズン前なので番組は4期のテスト前までで終わっている。)

 

ホンダ=F1という認識は第2期の圧倒的な活躍に裏打ちされている。

第3期の惨敗なんて一般人には記憶の片隅にも無いのだろう。

それを良いことにして、ホンダ=F1というブランディングを利用してイメージ戦略をすすめているのが今のホンダである。

 

そして惨敗に終わった第3期はなんとワンカット、10秒で終わっていた。ナレーションで『9年間で1勝で終わった』。本当にそれだけだった。

 

2015年シーズンが終わった後にこんなことをいっても始まらないし、番組の構成はNHKが考えるものだからホンダには責任は全くないが、この構成を見るだけでホンダが2015年に惨敗した理由がわかるような気がする。

 

果たしてホンダは第3期惨敗の反省を本当にして、第4期に挑んできたのだろうか。

どうも、この番組と同じように第3期のことは忘却し、第1期の血沸き肉踊る挑戦と、第2期の栄光のみを意識して動いているようにしか見えないのだ。

 

第3期の失敗の原因はそれこそ星の数ほどある。

まずは参戦時のゴタゴタ、ジョイントしたチームのイケてなさ。その後自社チーム体制に移行するもののチームマネジメントの失敗。そし最後はワールドチャンピオンを獲得できるマシンを作りながら撤退のタイミングを誤り、ジ・エンド。

常に判断が後手後手にまわり無駄金ばっかり使っていたのが第3期のホンダである。

 

今回の番組を見ていていると、どうしてもそういった第3期で発生した課題に対して真摯に原因を究明して、もう一度こういったことが発生したときに同じ過ちを繰り返さないという『組織』と『仕組み』が作られていないように感じる。

 

番組に登場するエンジニアの皆さんは非常に真剣に仕事に取り組んでおられた。

夢にまで仕事が出てきて、今やっていることが夢なのか現実なのかわからくなっている、とまで仰っていた。

だが、責任者の新井さんから出てくる言葉は『宗一郎さんなら〜と言うと思う』的ないかにもオールドタイプなホンダファンが喜びそうなことだけであった。

 

宗一郎マネジメントを排除して成功したのが第1期の3勝であり、そこの立役者だった川本さんの考え方を否定して成功したのが第2期である。

いわばホンダは、レーシングの現場ではそういった『老害』を排除することによって新陳代謝が活発な組織を作り成功してきた。

 

宗一郎イズムなんてものは、第1期の段階で排除されていた。

だからこそホンダはここまでこれた。

イズムの排除という日本企業ではなかなかできないことをやり続けてきたのがホンダのイズムである。

 

そこが停滞していることに気がついているのだろうか。

番組の後半ではマクラーレンのブーリエから『人員の強化。F1エンジンの経験者をリクルートしろ』と強い要望を受けていた。

ホンダ側はこれをキッパリと拒否していた。

おそらくマネジメントの問題なのだろうが、それ以上にパワーユニットの開発に関して自分たち以上のスキルを持つ人間なぞいないという驕りがあるのではないか。

『組織』と『仕組み』と『手法』

ここを再構築しなくては、2016年も同じことを繰り返すことになると私は思う。

 

つるやたかゆき